大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 平成6年(ラ)815号 決定

主文

一  本件抗告を却下する。

二  抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨及びその理由は、別紙(一)ないし(四)記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

本件即時抗告は、抗告人が山城菱光コンクリート工業株式会社の株主として申し立てたものであるから、まず、抗告人が即時抗告権を有するかどうかについて判断する。

破産法は、破産手続に関する裁判については、「其ノ裁判ニ付利害関係ヲ有スル者」に即時抗告権を認めている(一一二条)から、破産宣告に対しては、これによつて法律上の利益が直ちに害される者が、利害関係人として即時抗告の申立てをなしうるものである。

株式会社について破産宣告がなされた場合、その株主の地位について直接法的影響が及ぶことを定めた明文の規定は、破産法、商法等には存在しない。もつとも、株式会社においては破産が解散事由とされている(商法四〇四条、九四条五号)ので、破産宣告がなされた株式会社の株主は、破産終結によつて会社の法人格が消滅するのに伴いその地位を喪失することにはなるけれども、破産宣告によつて直ちに株主権が消滅したり、株主権の内容をなす自益権や共益権に変更が生じたりすることになるものでもない。

そうすると、株主は破産宣告によつて直ちに権利を害されるべき利害関係人にはあたらないのであるから、抗告人は本件即時抗告の申立権がなく、本件即時抗告は不適法なものである。

よつて、本件抗告を却下し、抗告費用は抗告人に負担させることとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 藤原弘道 裁判官 野村利夫 裁判官 楠本 新)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例